【手・関節の痛み】透析アミロイドーシスについて徹底解説

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透析アミロイド―シスという病気を知っていますか?実は透析期間が長くなればなるほど、発症するリスクが高くなる透析治療の合併症なのです。

骨や関節に症状がみられ、手足のしびれや痛みが生じて、透析アミロイドーシスが進行すると日常生活を送ることに支障をきたすようになります。

症状がみられてからでは、薬で痛みを緩和することやリハビリテーションを行って生活の質の改善を図ることしかできず、元通りに治すことはできません。

発症を予防することこそが一番大切な治療となるのが透析アミロイドーシスです。今回は、透析アミロイド―シスの症状や原因、治療法について一緒に学んでいきましょう。

アミロイドーシスの種類

アミロイドとは繊維状の異常なたんぱく質のことです。アミロイド―シスとは、このアミロイドが臓器に沈着して、さまざまな機能障害をきたす疾患のことを言います。

アミロイド―シスには全身性アミロイドーシスと限局性アミロイドーシスの2種類があります。複数の臓器にアミロイドが沈着するものを全身性アミロイド―シスと言い、限局した臓器にアミロイドが沈着するものを限局性アミロイドーシスと言います。

透析アミロイドーシスの起こる原因

この2つのうち、透析アミロイドーシスは全身性アミロイド―シスに分類されます。

透析アミロイド―シスは長期間の透析によって起こりやすく、長期透析患者や高齢者に多い合併症です。一般的には透析治療を10年以上続けている方に多くみられます。

透析アミロイド―シスでは、β2ミクログロブリンという小さなたんぱく質で主に構成されるアミロイドが、骨や関節を中心に沈着することにより、関節・神経症といった症状を引き起こします。

透析アミロイド―シスの症状

続いては透析アミロイドーシスの具体的な症状をみていきましょう。

透析アミロイドーシスでは、アミロイドが骨や関節に沈着することで、やがては関節のしびれや痛み、変形、運動障害がみられるようになり、手根管症候群や多関節痛、破壊性脊椎関節症などをきたします。

透析アミロイド―シスの診断基準では、多関節痛・手根管症候群・弾撥指・透析脊椎症・骨嚢胞の5つの主要症状のうち、2つ以上が認められる場合を臨床診断例とされています。

それぞれの症状は以下の通りです。

透析アミロイドーシスの症状1:.多関節痛

肩関節・手関節・股関節・膝関節などの複数の関節に痛みが出ます。特に肩関節に痛みを伴う場合が多く、関節が冷えた場合に特に痛みが多くみられます。

透析アミロイドーシスの症状2:.手根管症候群

手根管症候群は、正中神経が圧迫され、人差し指、中指を中心にしびれや痛みが出ます。特に朝痛みが出る場合が多く、手を振る、指の曲げ伸ばしなどを行うとしびれや痛みが軽減します。

手根管症候群が進行すると親指の付け根部分(母指球)が痩せ、細かい指の操作や親指と人差し指でOKサインを作ることが難しくなります。

特に透析期間を8年以上続けている場合に手根管症候群の発症が増加します。また、透析期間が20年間の半数に手根管症候群の発症が認められると言われています。

透析アミロイドーシスの症状である手根管症候群

透析アミロイドーシスの症状3:弾撥指(だんぱつし:ばね指)

弾撥指はばね指とも呼ばれ、指の曲げ伸ばしの際にある部分で引っかかりが起こり、パチンとばねのように指が伸びる症状です。

指を曲げる筋肉を支えている屈筋腱は、腱をベルトのように押さえている腱鞘のトンネルの中を通っていま。これらの腱や腱鞘に炎症が起こることで、滑りが悪くなると腱鞘炎を起こし、さらに進行するとこのばね指の症状を起こすのです。

透析アミロイドーシスの症状である弾撥指

透析アミロイドーシスの症状4:.透析脊椎症

透析脊椎症は、脊椎の骨や靭帯にアミロイドが沈着することで起こります。透析脊椎症が進行すると、手足のしびれや痛み、手や足の力が入りにくくなることや、排尿・排便障害などが生じ、手術が必要となることもあります。

透析脊椎症は、アミロイドが沈着する場所により2つに分けられます。

破壊性脊椎関節症

一つ目が、破壊性脊椎関節症です。

背骨の骨組織にアミロイドが沈着して、骨・軟骨の破壊され椎骨の間にある空間が狭くなることで神経が圧迫される状態が進んでいきます。

破壊性脊椎関節症は、特に首の骨や腰の骨で多くみられます。破壊性脊椎関節症によって神経が圧迫されると、手のしびれや肩の痛み、お尻から足の外側にかけてのしびれや痛みなどがみられます。

脊柱管狭窄症

二つ目が、脊柱管狭窄症です。

背骨の靭帯にアミロイドが沈着すると、靭帯が厚くなります。それにより、脊椎の神経が中を走っている脊柱管が狭くなり、脊椎の神経が圧迫されて足のしびれや痛み、歩くと痛みやしびれが出て休むと症状が軽快するという間欠歩行の症状がみられます。

破壊性脊椎関節症と脊柱管狭窄症

透析アミロイドーシスの症状5:.骨嚢胞

骨嚢胞は、関節症が進むことで骨の中に空洞(骨嚢胞)がみられるようになる症状です。

特に手関節周囲の骨によくみられ、透析期間16年以上の60%に骨嚢胞の症状が認められると言われています。

骨嚢胞の副症状

骨嚢胞の副症状としては、骨折、虚血性腸炎(大腸への動脈の血流が一時的に悪くなり、腹痛や下痢、血便などがみられる)、皮下腫瘤、尿路結石などがあります。

参考文献1:アミロイドーシス診療ガイドライン2010

参考文献2:岡山大学病院 整形外科・脊椎・脊髄グループ

参考文献3:新しい診断と治療のABC 透析合併症

透析アミロイド-シスの主な原因

続いては、透析アミロイドーシスの起こるメカニズムや発症リスク因子についてみていきましょう。透析アミロイド―シスのはっきりとした原因はまだ解明されていません。

透析期間が長くなることで、アミロイド繊維が骨・関節組織に沈着することが具体的な原因と考えられています。

透析アミロイド―シスの発症リスク因子

透析アミロイド―シスを発症させるリスク要因として以下のことが挙げられます。

  • 長期間透析治療を受けている
  • 年齢が60歳代
  • 女性である
  • 糖尿病性腎症である
  • 低アルブミン血症である

2010~2011年に調査された日本の透析患者の統計によると、透析期間が5年長くなるごとに透析アミロイドーシスの発症リスクが約2倍増加することが分かっています。

また、透析歴が30年以上の場合、透析アミロイドーシスによる関節症への手術や日常生活に支障をきたす破壊性脊椎関節症の割合が顕著に上がることが分かっています。

参考文献1:日本透析医学会 図説 わが国の慢性透析療法の現況

参考文献2:透析患者のアミロイド―シス治療

透析アミロイド―シスのメカニズム

続いては、透析アミロイドーシスの起こるメカニズムを確認していきましょう。

透析アミロイドーシスは、β2ミクログロブリンで構成されるアミロイド繊維が骨や関節組織に沈着することで起こります。

β2ミクログロブリンは、全身の細胞に存在している身体にとって必須のたんぱく質です。透析ではβ2ミクログロブリンを除去することはできません。

血中で増えたβ2ミクログロブリンは細長い形状のアミロイド繊維を作り、骨や関節組織に沈着します。

もともとβ2ミクログロブリンは機能的な立体構造をしていますが、この構造がほどけることにより、ほどけたたんぱく質同士が層状に積み重なって細長い形状のアミロイド繊維を作ります。

参考文献1:透析アミロイド病の原因物質の基本立体構造解明に成功

参考文献2:図説 わが国の慢性透析療法の現況

透析アミロイドーシスによる関節痛

透析アミロイドーシスの治療方法

さて、このようにアミロイド繊維が沈着することで起こる透析アミロイドーシスですが、どのような治療方法があるのでしょうか?

実は、透析アミロイド―シスには根本的な治療方法は今のところありません。また、手術で沈着したアミロイドを取り除くこともできません。

透析アミロイド―シスによって骨・関節症状がみられる場合には、骨や関節の痛みを軽減する薬物治療や、リハビリテーションによる日常生活活動レベルの維持・改善が行われます。

透析アミロイドーシスの治療方法1:薬物療法

透析アミロイド―シスによる関節や骨の痛みに対しては、薬物療法として非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が使用されることが一般的です。

また、痛みが強い場合にはステロイド剤の投与が行われることもあります。

ステロイド剤は、鎮痛作用が強い薬剤です。一方で副作用も強いので、長期間の使用は避け短期間の使用にとどめる必要があります。

透析アミロイドーシスの治療方法2:リハビリや外科手術

ステロイド剤に依存して症状を抑えることを防ぐためにも、骨・関節症状による運動障害や日常生活活動(ADL)の低下に対しては、リハビリテーションが行われます。

また、骨・関節症状が進行している場合には、頸椎カラーなどでの固定や整形外科的な手術が検討されることもあります。

透析アミロイドーシスは予防が重要

このように、透析アミロイドーシスは一度発症すると治療が難しい透析の合併症です。

できるだけ透析によるアミロイドが沈着することを防いだり、骨・関節症状の発症や進行を防ぐ予防治療を行うことがとても大切です。

続いては、透析アミロイドーシスの予防方法をみていきましょう。

アミロイドの沈着を予防するための治療

アミロイドの沈着を予防するためには、透析でできる限りのβ2ミクログロブリンを除去する工夫が必要です。

β2ミクログロブリンを除去する効果が得られ、透析アミロイドーシスにより起こる症状を予防するとされている治療には以下の方法があげられます。

  • エンドトキシン濃度・純度の高い透析液を使用する
  • 通常の血液透析よりも大きな物質を透過可能な高性能膜を使用する
  • 血液濾過透析(HDF)を行う
  • β2ミクログロブリンを吸着・除去するβ2ミクログロブリン吸着カラムを使用する

透析において上記のような工夫をすることで、透析アミロイドーシスを予防・症状を軽減することができます。

参考文献1:血液濾過透析(HDF)のしくみ

参考文献2:須田クリニック 透析について

血液透析と透析アミロイドーシスの予防

まとめ

透析アミロイド―シスは、長期の透析患者に高頻度でみられる合併症です。日本は高齢社会であり、これからさらに透析患者の治療期間が長くなることが予測されます。

透析アミロイド―シスは発症すると、骨・関節症状が進んで著しくADLやQOLが低下に結びつきます。一度透析アミロイドーシスを発症すると根本的な治癒は難しいため、予防が一番の治療方法と言えます。

透析治療を行う施設を選ぶ際には、透析アミロイド―シスへの対策をしっかり行っているかを踏まえて探すことをおすすめします。

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