透析患者必読!シャントを自己管理して5年以上長持ちさせよう

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お医者さん

人工透析とは、全身の血液から老廃物を除去する治療です。1回約4時間という短時間のうちに大量の血液を効率よく循環させなければなりませんが、そのために必要なのがシャントです。

シャントの仕組みや手術方法については、以前の記事【チェックリスト付き】透析に使うシャントとよくあるトラブルって?で解説しましたが、シャントはどれくらい長持ちさせられるものなのでしょうか?

あらためてシャントに起こるトラブルや対処方法、できる限り長持ちさせる管理方法を見ていきましょう。

そもそも、シャントの寿命は何年?

シャントとは人工透析治療を効率よく行うため、大量に血液が流れるように処置をした箇所です。人工透析の際には、シャント部分に針を刺して血液を抜き出すことになります。

当然のことながら、抜き出して透析器を通した血液は体内に戻さなければなりません。そのため、透析治療1回につきシャントには2ヵ所の穿刺が行われます。

週3回の透析治療を受けているなら、1年間で約300回もシャントに針を刺すことになります。これではシャントが痛んでくるのも当然だと思いませんか?

シャントが痛んでしまったら、新たにシャントを作り直さなければいけませんが、一体どのくらいで寿命を迎えるのでしょう。

これにはシャントの種類や患者の年齢、日頃お手入れ等、様々な条件が関わってきます。自己血管シャントは3年~5年、人工血管シャントは3年程度という研究もありますが、一概に何年ということはできません。

逆に考えれば、「管理の仕方によってはシャントを長持ちさせることができる」のです。

血管

正常なシャントの状態を知っておこう

シャントが痛んでくると、様々な予兆が現れてきます。その時点でかかりつけ医に相談して処置をすれば、決定的なトラブルを避けられることもあります。

そのためにも、正常なシャントの状態を知っておくことが大事です。そして、シャントに異常がないか毎日チェックする習慣が、結果としてシャントを長持ちさせることに繋がります。

まず、シャント部分にそっと手を置いてみましょう。正常なシャントなら、血液の流れる「ザー」という感覚があります。この振動は、医学的に「スリル」と呼ばれています。

次に、シャントのある側の腕と反対側の腕を触ってみましょう。シャントのある腕は、反対側より多少の熱をもっていると思います。

しかし、見た目や色合いにそれほど差はありません。また、手の先が冷たかったり、しびれや痛みを感じたりすることもありません。これが正常なシャントの状態です。

逆にいうと、スリルが感じられない・色合いがおかしい・腫れている・痛みやしびれがあるといった症状があると、シャントが痛んでいる可能性があるというわけです。

人工透析

シャントによく起こる5つのトラブルと治療法

シャントに起こるトラブルには、様々なものがあります。どんな症状が起こるのか知っておくことが、トラブルの予防につながります。

1.シャントの狭窄・閉塞

シャントのトラブルの中で比較的よく起こるのが、シャントの狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)です。狭窄とは、シャントが細くなって透析に必要な血流量が得られなくなること。閉塞は、完全にシャントが塞がってしまい透析ができなくなることです。

狭窄や閉塞が起こる原因は様々です。突然、起こる場合もあれば、予兆が感じられることもあります。

シャント内を流れる血液の圧力で血管壁の厚みが増してしまう・シャント内に血栓が詰まるといった病変だけではなく、血圧の低下や脱水症状になっただけでも、シャントが狭窄・閉塞してしまうこともあります。

  • スリルが弱い
  • スリルが感じられない
  • シャントの一部にドキドキという拍動を感じる
  • シャントが硬く感じられる
  • シャントのある側の腕が腫れている

こういった症状があった場合は、シャントの狭窄・閉塞が疑われます。

シャントの狭窄・閉塞の治療法としては、シャント内にバルーンを入れて狭いところを広げるPTAが一般的です。PTAとは「Percutaneous Transluminal Angioplasty」の略で、日本語で言うと「経皮的シャント拡張術」となります。PTAは1時間程度で行うことのできる手術で入院の必要はありません。

2.シャントの感染

透析治療では、シャントに針を刺します。その傷ができた部分を清潔にしておかないと、細菌に感染してしまうことがあります。特に人工血管シャントの場合は、自己血管シャントの数倍感染しやすいといわれています。

感染の原因はシャントへの穿刺だけではありません。シャントのある側の腕にかぶれやかき傷があると、そこから細菌が体内に入り込むことがあります。

  • 透析後、針を刺した部分の周囲が赤く腫れる
  • 針を刺した部分から膿が出る
  • シャント部が熱を持っている
  • シャント部に痛みがある

こういった症状があった場合は、シャントの細菌感染の可能性があります。感染を早期に発見できれば、抗生物質を投与するだけで改善が見込めます。

しかし、細菌がシャントの人工血管に感染してしまうと、薬での治療が難しくなります。場合によってはシャントを一度閉鎖して、新たに外科手術で作り直さなければいけなくなることもあります。

感染に気づかずに重症化すると、細菌が全身に回って敗血症を起こしてしまうことも。すると命の危険もあります。シャントへの感染は、とにかく異変を早く察知することが肝心です。

3.シャント瘤(りゅう)

シャント瘤とは、シャントの一部にできる袋状の瘤のことです。シャント瘤ができる原因もまた様々ですが、シャントに何度も針を刺すうちに、そこが固くなり瘤になってしまうことがあります。シャント内は血流量が多くなっているので、血管壁に強い圧力がかかり瘤ができることもあります。

シャント瘤があるかどうかは外見から簡単に分かりますが、ほとんどの場合、すぐに処置が必要なものではありません。

  • シャント瘤が急に大きくなった
  • シャント瘤部分の皮膚が赤くなっている
  • シャント瘤の周辺が青紫色になった
  • シャント瘤部分に痛みを感じる

ただし、上記の症状が見られる場合は、シャント瘤が破裂する危険があります。

シャント瘤には血液が詰まっているので、万が一破裂すると大出血してしまいます。すると止血が難しいだけでなく、感染症の可能性も出てきます。出血や破裂の危険があると医師が判断した場合は、緊急手術となります。

4.静脈高血圧症

シャントは動脈と静脈を結んで作られます。そのためシャントには動脈から大量の血液が流れ込みますが、その血液を静脈がきちんと流出できないと、手や上半身がむくむといった症状が出てきます。

これが静脈高血圧症です。普通の高血圧症とは違い、静脈内の血圧が高まって起こるため、こう呼ばれています。直接の原因は静脈の狭窄ですが、狭窄が起こった原因や狭窄のある部位は様々です

  • シャントのある側の手が握りにくい
  • 腕がむくんでいる
  • 上半身がむくんでいる
  • シャントのある腕に痛みがある
  • シャントのある腕がただれている

こういった症状が見られたら、静脈高血圧症の可能性があります。

治療法としては、静脈の狭窄している箇所を特定してPTAでシャントを拡張します。劇症の場合にはシャントを閉鎖して、反対側の腕にシャントを作り直すこともあります。

5.スチール症候群

スチールとは「盗む」という意味です。動脈の血流がシャントに奪われてしまい、手指の先まで血が行き渡らなくなるため、このように呼ばれています。

スチール症候群はシャント手術のすぐ後に起こることがあります。シャント手術によって血液の流れが急激に変化するためです。

動脈硬化のある患者は、スチール症候群になりやすい傾向があります。シャントを作ってからしばらくして起こる場合は、動脈硬化の進行が疑われます。

  • シャントのある側の指が冷たい
  • シャントのある腕がしびれる
  • シャントのある腕に痛みを感じる

こういった症状を感じたら、スチール症候群が起こっている可能性があります。放置していると指が壊死してしまうこともあるので、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

治療法としては、症状が軽ければ血管拡張薬を投与して経過を観察します。重症の場合には、血流量を調整する手術を行います。最悪の場合には、シャントを閉鎖しなければならないこともあります。

日常生活でのシャント管理

シャントをできる限り長持ちさせるには、とにかくトラブルを起こさないようにすること。そのためにも日常生活でシャントの管理をしっかりと行い、シャントの負担を少しでも減らすようにしましょう。

ポイントは以下の3つです。

  • シャント部の血行を悪くしない
  • シャント部を圧迫しない
  • シャント部に傷をつけない

シャント側の腕で重い荷物を持ったり、腕枕をしたりというのは厳禁です。腕時計も、シャント側の腕につけるのは止めておきましょう。

ちょっとしたかゆみやかぶれで、無意識にシャント部を引っ掻いてしまうことがあります。これもシャントを痛める原因です。どうしてもかゆみを我慢できないときには、軽く叩いて鎮めましょう。

気をつけるのは、シャント部分だけではありません。体を締め付けるような下着や服は、全身の血行を悪くする原因になります。全身の血行が悪くなれば、当然シャント部分にも負担がかかってしまいます。

血行をよくするため、軽い運動をするのは問題ありませんが、激しいスポーツはシャント部をぶつけたりする危険があるので避けたほうがいいでしょう。

軽い運動

シャントを長持ちさせるために食生活も管理しよう

人の体は食事から摂る栄養によって作られています。そのためシャントを長持ちさせるには、毎日の食事も重要になってきます。

栄養バランスが偏っていると、全身の血行が悪くなってしまいます。これはシャントの狭窄や閉塞を招く元です。さらに、栄養バランスが崩れると免疫力が低下し、シャントの細菌感染のリスクが高まります。

基本的には、バランスのとれた食事を心がけることが大切です。ただし、タンパク質・塩分・カリウム・リンの摂取は控えるようにしましょう。

タンパク質、塩分、カリウム、リンの注意点

タンパク質は人の体や血液を作る大切な栄養素ですが、摂りすぎると体内に老廃物が溜まってしまいます。すると、人工透析で除去しきれなくなり、シャントへの負担も大きくなります。

塩分を摂りすぎると、体内に水分が溜まって血液量が多くなります。すると、高血圧を引き起こし、血管に負担をかけることになってしまいます。

カリウムの摂り過ぎた場合、健康な人なら余分なカリウムは腎臓で排出されます。しかし、透析患者は人工透析で除去するしかないので、高カリウム血症になりやすいです。高カリウム血症になると不整脈・頻脈といった症状が起こって、血管への負担が大きくなります。

また、リンの過剰摂取は動脈硬化の原因になりますし、皮膚にかゆみが出ることがあります。動脈硬化はシャントの狭窄や閉塞、かゆみはシャントの感染症へのリスクが高まります。

まとめ

人工透析に欠かせないシャントですが、シャントの寿命は永遠ではありません。いずれは作り直さなければならない日が来ます。

しかし、日常生活でシャントに注意を払うことで長持ちさせることができます。シャントをきちんと管理して長持ちさせることで、いろいろな負担を減らすことができます。

これまでシャントの管理を考えたことのなかったという人は、まずはシャントを毎日チェックする習慣をつけてみてください。そして、少しでも違和感があったら、すぐにかかりつけ医に相談するようにしましょう。

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