透析患者でも意外に知らないシャントの種類~自己血管と人工血管~

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シャントの種類

人工透析治療を受けるとなると、事前準備としてシャント手術を行います。しかし、人工透析にはシャントが必要ということは知っていても、その理由やシャントの種類については分からないという方もいるのではないでしょうか?

シャントには自己血管と人工血管の2種類がありますが、一体どう違うのでしょうか?改めてシャントについて、詳しくご紹介します。

血液透析にはバスキュラーアクセス(シャント)が不可欠

血液透析は血管から血液を抜き出して、透析機で老廃物を除去してから体内に戻すという治療です。毎分約200ミリリットルの血液を抜き出して、また体内に戻す必要があります。その血液の出入り口となるのがシャント。より正確には「バスキュラーアクセス」と言います。

バスキュラーを日本語に訳すと「血管の」になります。つまりバスキュラーアクセスとは、「血管内への進入口」といった意味だと思っておけばいいでしょう。バスキュラーアクセスには、さまざまな方法がありますが、シャントはそのうちの1つということになります。

なぜ、バスキュラーアクセスが必要なのか?

通常、血管注射や点滴は体の表面に近いところを通っている静脈に行いますが、血流量が少ないため透析に十分な血液量を抜き出すことが難しいのです。かといって動脈は体の奥深くを通っているため、簡単には針を刺したり止血したりできません。

そのため、透析治療のために何らかの方法で、針が刺しやすくて血流量も十分な仕組みを作っておく必要があります。これがバスキュラーアクセスです。

バスキュラーアクセスは、大きく2種類に分類できます。ひとつは、血液が本来通るべき血管とは別のルートを流れるもの。もうひとつは、血液のルートはそのままで、透析に必要な血流量を確保したものです。

このうち、血液が本来とは違うルートを流れるようにしたものをシャントと呼びます。日本透析医学会によると、日本では全透析患者の約95%がシャントによる透析を行っています。

シャントってどんな構造なの?

シャントには、「自己血管内シャント」と「人工血管内シャント」の2種類がありますが、いずれのシャントも基本的な構造は同じです。

シャントは、腕の静脈と動脈を繋ぎ合わせて作ります。すると動脈の血液の一部が静脈に流れ込むようになり、静脈の血流量が増えます。血流量が増えた部分に針を刺すことで、透析に必要な血液量が得られるようになります。

ただしシャントは、本来の血液の流れとは違うルートを作るものです。そのためごくわずかではありますが、心臓に負担がかかります。心臓に持病がある患者はシャントが作れないため、他の方法を選ばなければなりません。

自己血管内シャント

自己血管内シャントとは文字通り、自分の血管同士を直接繋ぎ合わせてシャントを作る方法です。日本では、血液透析患者の約90%が自己血管内シャントを利用しています。これは、さまざまなバスキュラーアクセスのうちでも自己血管内シャントが、最も感染症を起こしにくく長持ちするからです。

自己血管内シャントは主に、利き手と反対の腕の手首あたりに作ります。手首は動脈と静脈の走っている位置が近く、繋ぎ合わせやすいためです。手首の血管が細い人の場合は、肘近くの太い血管でシャントを作ることもあります。

自己血管内シャントを作る手術は局所麻酔で行われ、時間も30分~1時間程度しかかかりません。通常はシャント手術を終えてから2週間ほどで、透析に利用できるようになります。

人工血管内シャント

静脈が細い、皮膚の表面から見えづらいといった理由で自己血管内シャントが作れない場合に行われる方法です。皮膚のすぐ下に埋め込んだ人工の血管で、動脈と静脈とを繋いで作ります。透析を行う際には、人工血管の部分に針を刺すことになります。

人工血管内シャントも、ほとんどの場合は腕に作ります。ただ、腕の血管の状態が悪いといった状況によっては、太ももや胸など腕以外の場所に作ることもできます。

使われる人工血管には主に、e-PTFE製とポリウレタン製の2種類があります。e-PTFEは耐久性に優れていますが、針を刺した穴が自然には塞がらないというデメリットが。ポリウレタン製には針穴を自然に塞いで止血する機能がありますが、耐久性に劣っています。どちらも一長一短と言えるでしょう。

人工血管内シャントの手術も局所麻酔で行うのが一般的ですが、作る部位などによっては全身麻酔になることもあります。手術時間も自己血管内シャントに比べると長く、1時間半~2時間ほどかかります。また、人工血管は血栓ができやすく、感染症のリスクも高くなります。

手術

シャント以外のバスキュラーアクセス

心臓に持病があったり血管が細かったりすると、シャントを作ることが難しくなります。その場合は、別のバスキュラーアクセスの方法を選ぶことになります。

上腕動脈表在化法

動脈は血流量が多く、透析に必要な血液の量も簡単に確保できます。しかし、動脈は筋肉の下を走っているため、針を刺したり止血したりといったことが簡単にはできません。なら動脈の位置を皮膚に近いところまで動かして、針を刺しやすくしようというのが上腕動脈表在化法です。

動脈を移動させる手術にかかる時間は約1時間程度で、局所麻酔で行います。病院によっては日帰り手術を行っているところもあります。上腕動脈表在化法では血液を抜き出すのは動脈から行いますが、戻すのは静脈となります。

透析機を通した血液を戻すのに十分な太さの静脈がないと、上腕動脈表在化法は使えません。また、動脈は静脈よりも止血に時間がかかる、何度も針を刺すことで動脈瘤ができやすくなるといった欠点もあります。

カテーテル法

緊急に透析治療の必要があり、シャント手術が間に合わない時などに行われるのがカテーテル法。首から胸にかけての静脈や、太ももの静脈にカテーテルを入れて透析を行います。

カテーテルの中は2つの管に分かれていて、血液を抜き出すことと戻すことが同時にできるようになっています。血管内にカテーテルを入れてしまえば、透析のたびに針を刺す必要はありません。

ただ、カテーテルは人工物のため、血液が詰まりやすいという欠点があります。感染のリスクも高まるため、通常は2週間程度しか使うことができません。カテーテルを入れている間は、入浴もできなくなります。

近年になって、皮膚の下に埋め込んで使うタイプの透析用カテーテルが開発されました。このカテーテルなら平均で2年程度は使い続けることができ、入浴も可能です。

それでもやはり、感染症や血液が詰まるといったリスクは、ほかのバイスキュラーアクセスよりは高くなっています。さまざまな事情でほかの方法が不可能な場合にのみ使われると考えておきましょう。

まとめ

透析治療に欠かせないバイスキュラーアクセスには、様々な方法があることがお分かりいただけたと思います。どのバイスキュラーアクセスにもメリットとデメリットがあり、一番リスクの少ない自己血管内シャントでも、使い続けていれば寿命が来て使えなくなってしまいます。

自分が選んだバイスキュラーアクセスについて詳しく知ることで、できるだけ長持ちさせるようにしたいものです。少しでも不安があったら、すぐにかかりつけ医師に相談してください。

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