リンが溜まると寿命が縮まる?透析患者のリン制限について

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透析患者のリン制限

透析患者には、様々な食事制限があります。週3回の人工透析では、天然の腎臓のように十分な老廃物の除去ができないからです。食品に含まれる成分の中で、透析患者が控えたほうがいいものの1つがリン。

では、リンを摂り過ぎるとどんな影響があるのでしょうか?リンの摂取制限について、この機会に知っておきましょう。

なぜ、透析患者は制限が必要なのか?

リンは、人の身体を作るのに欠かせないミネラルです。カルシウムやマグネシウムと結合することで、骨・歯・遺伝子の核酸などの一部となっています。

人体には必要不可欠なリンですが、意識して摂らなくても欠乏することはまずありません。それは、非常に多くの食品にリンが含まれているからです。

それどころか、加工食品には不可欠の食品添加物になっているため、摂り過ぎが問題視されているほどです。

通常は、余ったリンは腎臓の働きによって体外に排出されます。しかし、リンが多すぎると十分に排出できなくなり「高リン血症」となってしまいます。

人工透析では排出できるリンの量が限られているため、高リン血症になりやすい状態だといえます。そのため、食事から摂るリンの量を制限しなければならないのです。

高リン血症になるとどうなる?

血液中のリンの量が増えると、身体はリンとカルシウムを結びつけてバランスをとろうとします。その結果、骨に蓄えられているカルシウムが血液中に溶け出して、骨がもろくなってしまうのです。

さらに、血液中でカルシウムと結びついたリンは、体の様々な部分に付着していきます。関節に付着すると変形を引き起こし、運動障害や激しい痛みが見られるようになります。皮膚に沈着すると乾燥肌になり、我慢できないほどの痒みを感じることもあります。

血管内はとくに付着しやすく、動脈硬化の要因となります。症状が進むと、脳出血や心筋梗塞といった命に関わる事態になることも。末梢循環障害で、手足の痛みや壊死が起こることもあります。

高リン血症が長引いたときに起こる悪循環

また、高リン血症が長期間続くと「副甲状腺機能亢進症」を引き起こし、副甲状腺ホルモンの分泌量が増えて、骨が次第に溶かされてしまいます。骨にはリンも多く含まれているので、さらに血液中のリンの濃度が高まるという悪循環に陥ります。

こういった事態を引き起こさないために、リンの摂取制限が必要になるのです。透析患者の場合は体重による多少の上下はありますが、目安としてリン摂取量は1日800mg以下が望ましいとされます。

要チェック!リンが多い食品・少ない食品

リンの含まれている料が多い食品には、以下のようなものがあります。

  • 魚介類…しらす干し、ししゃも、わかさぎ、干しエビ、ウナギ、ドジョウなど
  • 肉類…豚レバー、牛レバー、鶏レバーなど
  • 加工食品…ベーコン、ハム、ソーセージなど
  • 乳製品…脱脂粉乳、プロセスチーズ、ヨーグルトなど
  • 卵・魚卵…卵黄、ウズラの卵、スジコ、タラコなど
  • 豆類…きな粉、納豆、アーモンド、カシューナッツ、落花生など

タンパク質を含む食品

こうして見ると、リンはタンパク質に多く含まれていることが分かると思います。

反対にリンの含有量が少ないものとしては、牛テール・牛タン・豚足・鶏手羽・ラム肉・合鴨肉・さらしクジラなどがあります。

食品添加物としてのリンに注意

実は、リンには「有機リン」と「無機リン」の2種類があります。肉類・魚介類・豆類などに含まれているのは有機リンです。インスタント食品や菓子などに食品添加物として加えられているのが無機リンです。

有機リンと無機リンは、食べたときの吸収率に大きな違いがあります。有機リンは摂取量の半分程度しか吸収されないのに対し、無機リンはほぼ100%が身体に吸収されてしまうのです。

同じ量のリンを摂るとしても、インスタント食品や菓子などを避けるようにしたほうが賢明です。

リンの摂取制限のしすぎも実は問題です

リンは、ほぼすべてのタンパク質に含まれています。100gのタンパク質を摂ったら、約1%はリンだと考えておきましょう。そのため、リンの摂取量を制限するにはタンパク質を控える必要があります。

しかし、タンパク質は人の身体の細胞を作っている大切な栄養素です。リンの摂取を厳しく制限をしようとするあまりタンパク質の摂取量が少なくなると、身体に深刻な影響が出てきてしまいます。

タンパク質の摂取量が極端に少ないと、エネルギー不足に陥りやすくなります。すると足りないエネルギーを補うため、筋肉が分解されて筋肉量が減ってしまいます。肌のハリやツヤも失われ、髪も細く切れやすくなります。

思考力や集中力に関係するドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質も、タンパク質から作られます。そのため、タンパク質不足になると思考力や集中力が発揮できなくなり、仕事や日常生活に支障が出てきます。

透析患者はタンパク質不足が命に関わることも

タンパク質は、血液中のアルブミンと呼ばれる成分の元にもなっています。このアルブミンには血液中の浸透圧を調整する働きがあります。アルブミンが少なくなると、透析中に血圧が低下しやすくなります。

アルブミンには、体内に入ってきた毒素と結合して中和する働きも。アルブミンが少なくなると、病原菌などに対する身体の抵抗力も落ちてしまいます。ただでさえ透析患者は感染症のリスクが高いのですから、低タンパク状態が続けば命取りになりかねません。

リンを制限することは大切ですが、やみくもにタンパク質の摂取量を減らすのはお勧めできません。体に必要な量のタンパク質は、きちんと摂るようにしたいものです。

エネルギー切れ

薬でリンの摂取量を下げるという選択肢

タンパク質を摂りながらもリンの摂取量を抑えたい場合、内服薬に頼るという方法もあります。リンを含む食品を食べても、リンが体に吸収されずに排出されるようにする薬です。

代表的なものとして、炭酸カルシウム・塩酸セベラマー(レナジェル、フォスブロック)・クエン酸第二鉄水和物(リオナ)があります。

ただ、炭酸カルシウムは血管の石灰化を招くこともあるので、服用量が制限されています。レナジェルやフォスブロックには、アシドーシスを起こしやすいという副作用が。リオナには、お腹を下しやすいという副作用があります。

また、どの薬でも気をつけなければいけないのは服用するタイミングです。これらの薬は体内で食べたものと混じり合うことで、食物に含まれているリンを吸着します。ですから食事が時間が経つと、いくら飲んでも効果が得られなくなってしまいます。

リン吸着薬を使う場合は、食事が終わった直後に飲むようにしましょう。

まとめ

透析患者にリンの摂取制限が必要な理由は分かっていただけたと思います。しかし、リンの摂り過ぎを恐れるあまりタンパク質不足になってしまうと、身体に深刻な影響が出てしまいます。これでは本末転倒です。

タンパク質を十分に摂りながらリンの摂取量を抑えるには、加工された食品を避けるのがベター。リンの少ない食材を選んで、自宅で調理した食事をするように心がけましょう。

リンの摂取量を抑えるには内服薬という手段もあります。食事制限が難しい場合は、かかりつけ医師に相談してみましょう。

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