自由に透析できる「在宅血液透析」のメリット・デメリットとは?

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在宅透析

糖尿病患者で気を付けなければならない合併症の一つが糖尿病性腎症です。透析導入の原因疾患の第1位となるこの病気は、腎機能が著しく低下します。

末期腎不全まで進行すると、薬物療法や食事療法では対応できなくなり、透析療法が必要になります。腎臓の働きを代行する治療としては「透析治療」、「腎移植」どちらかを選択する必要があります。

国内では移植のための腎臓提供者が少ないこともあり、多くの患者が透析療法を行っていますが、近年「在宅透析」を選択する人が増えてきています。今回は在宅透析治療について詳しくご紹介してきます。

日本の透析療法の現状について

日本透析医学会の統計調査(2014年度)によると、国内の慢性維持透析患者は約32万人いると言われています。透析開始年齢は68.4歳で年々上がっており、平均年齢は66.9歳となっています。

透析を受けられる国内の医療機関は約5,000施設。施設で透析を受けている患者は約30万人、昼間の透析が26万に、夜間は4万人となっています。

日本の人工透析技術は世界最高のレベルと言われています。週に2・3回、1回4~5時間の透析をきちんと受けて、医師の指示通りに食事療法を行っていれば、たとえ腎機能が全くなくなったとしても尿毒症にならずに社会生活を送れている人はたくさんいるのです。

新しい透析の選択、「在宅血液透析」とは?

透析治療はライフスタイルや合併症など、自分の状態に合った治療を選ぶことができます。透析治療は一般的に「血液透析(HD)」と「腹膜透析(CAPD)」の2種類あります。簡単に二つを説明すると血液透析は病院やクリニックで行う透析、腹膜透析は腹部にカテーテルを設置する自宅で行う透析です。

これまでは自宅透析と言えば腹膜透析が主流でしたが、近年、医療技術の発展によって透析治療の新しい選択として「在宅血液透析」が注目されています。

糖尿病チャンネルでは何度も説明していますが、血液透析とは血液を体外に出し、ダイアライザー(人口腎臓)をいう体の外にある機械を通して、液中の老廃物を除き、体液量やPH、電解質のバランスを調整して再び体内に戻す治療法です。医療機関と同じ装置を使用し、自宅で血液透析を行うことが在宅血液透析です。

在宅血液透析は理想の透析

一番のメリットは透析ために通院する必要がなく、自身のライフスタイルに合わせて短時間で多くの回数の透析を行うえる点です。医療機関で行うと透析は多くて2日に1回という頻度が一般的です。ですが、在宅血液透析は毎日行うことができ、理想の透析とも言えます。週3回の透析に比べると、水分や老廃物の増減が少なくなり、身体にやさしい透析でもあります。

患者自身の生活に合わせて治療を行うことができ、生存期間が延びることも明らかになっています。十分な透析(生命予後が良いとされる頻回または長時間透析)を行えるため、飲水・食事制限がほぼなく、また透析患者に多く見られる合併症のリスクが減ることもメリットです。

しかし、透析装置の立ち上げから血液に針を刺す作業、機械の操作まで自分で責任もって行わなければなりません。緊急時に備えて介助者も必要です。装置の設置費用や電気代、水道代も自己負担となります。決まり事や制約が多いのが在宅血液透析の難点でもあります。

元気

在宅血液透析のメリット・デメリット

在宅血液透析はまだまだ普及している治療法とは言えないのが現状ですが、こまめに透析することによって食事制限の緩和や体調がよくなった等の声が出ているそうです。在宅血液透析のメリットとデメリットを詳しく紹介していきます。

在宅血液透析のメリット

  • 透析回数が増えることで合併症のリスクが減ります。内服薬も少なるという利点も。
  • 食事・飲水制限が少なくなります。
  • 透析中の家族団らんや仕事など自分の時間を増やすことができます。
  • 治療のペースや進め方を自分で選択することが可能になります。
  • 今まで通院にかけていた時間がなくなり、プライベートな時間が増える。
  • 時間を自由に使えるため、社会復帰する人が多いです。
  • 施設透析のデメリットである感染リスクが減ります。大災害や非常事態時でも透析を行うことが可能に。

在宅血液透析のデメリット

  • 自己管理・自己決定・自己責任が苦手な方は向いていない治療法です。
  • 自己穿刺ができる必要があります。
  • 介助者が必要な点。一緒にトレーニングを行う必要もあります。
  • 1カ月に2~3万円の金銭的自己負担があります
  • 機械の設置、毎月の物品の受け取り・保管に場所が必要です。
  • ご家庭での事故の可能性がゼロとは決して言えません。

【要確認】在宅透析をはじめるには条件があります

在宅血液透析は誰もが受けられる治療法ではありません。在宅血液透析を実施するには、5つの条件があります。

  • 「透析患者自身が希望しており、介助者も同意していること」
  • 「自己穿刺などの自己管理ができること」
  • 「合併症など在宅透析に影響のある体調状態ではなく、医師の承認があること」
  • 「在宅透析前に一定期間トレーニングが出来る人」

また、在宅で行うので、建物の条件もあります。

  • 上下水道が完備されている
  • 必要な電源は単独20A
  • 井戸水や地下水は使用不可。水道水(圧力2kPa)が必要不可欠
  • 透析装置、水処理装置、透析液・回路などの保管スペースの確保(畳1畳以上)

※保管スペースは1カ月分の透析材料を保管するため、押入れの半分(上下)くらいのスペースが理想

※電源、水道などの室内環境は専門のスタッフが事前訪問調査を行う

在宅透析の約束事・決まり事

病院によって多少の違いはあるかもしれませんが、在宅血液透析を始める場合、いくつかの決まり事を遵守するように言われます。

内容としては、「問題が発生したらすぐに透析を終了する」や「装置の調子や体調が優れない時は施設透析に切り替える」「無理な除水などを行わない」などです。

在宅透析は医師や専門のスタッフが不在の状態なので、何か合った時の判断が難しいです。なので少しでも不調が出た場合は透析を中止して医師に相談しましょう。

他には、「2日以上空けない」「可能な限り長時間透析を実施する」など自宅でこまめに透析できる事で体調改善を狙っているので、施設透析と同じように行うのは意味がありません。より良いQOLのためにある決まり事なので必ず守りましょう。

費用はいくら?

近年、在宅血液透析に多くの人々が関心を持っています。日本透析医学会でもQOL(生活の質)を考えた場合、在宅透析は望ましい医療の姿とお薦めしており、普及に力を注いています。

ですが、病院と異なり自宅で行うということもあり、コスト面が気になるという方もいることでしょう。

お伝えしたいことは「血液透析」は、在宅でも通院と同様に保険が適用されます。自己負担は変わりませんが、保険請求が限定されているため自己負担になる部分があります。医療費については、「自己負担なし」所得に応じた一定額の自己負担(月額約1~2万円)」となる二つのケースが考えられます。

透析機器ですが、透析装置や医療材料は無償で借りることができます。ですが、透析関連機器の設置に関わる準備費用として一部自己負担が発生します。

  • 電源容量の増量(平均数千円)
  • 電源コンセントのアース対応化(平均数千円~1万円)
  • 透析装置専用のブレーカー設置<任意>(通常1~2万円)
  • 自宅透析室への給排水路整備(状況や選択する方法によって金額が大きく異なります。2万円~40万円)
  • 水道の圧を調整する弁やポンプの設置(水圧によって金額に上限あり。0円~10万円)
  • 漏水(水漏れ)警報器を設置する場合は別途費用が掛かります。
  • 年1回、排水管の高圧洗浄(1~2万円)を行う必要あり。

透析に使用する電気・水道代は自己負担となります。使用頻度によって金額は人それぞれですが、光熱費は月額約2~4万円と考えておけば良いでしょう。

さらに、「自宅改修工事」「医療器具の購入費」など費用がかかりますが、その後は光熱費、透析の医療廃棄分の処理費用、透析液の配達費用を続き負担するので、高額ではありません。

※廃棄処理については病院に持参すればかかりません。

費用

在宅血液透析に移行するまでの流れ

条件をクリアし在宅透析ができる事になってもすぐに開始できるわけではありません。まずは患者と一緒に介助者が病院に行き、説明を受ける必要があります。

そして在宅透析をしても問題ないかの適正審査、医師や専門のスタッフの面談や診察があります。それをクリアすると実際に透析装置を置いても問題ないか透析液など材料の保管場所は問題ないかのチェックを受けます。

全てのチェックをクリアしたら、医師・スタッフから透析に関する知識や技術取得のためのトレーニングを3~6ヶ月間行います。トレーニングは期間が決まっているものではなく、病院側から合格と判断されるまで続きます。

合格を貰えたら、やっと自宅の改修工事が入り透析装置の搬入と試運転まで進みます。在宅透析なので毎日自宅で透析を行いますが、多くの病院が月一外来が必要となっています。

トレーニングはどんなことをやるの

在宅血液透析に必要とされる知識・技術・実践のトレーニングは施設の体制や個人差があります。約3~6ヶ月と幅がありますが、実際どのようなトレーニングを行っているのでしょうか。一つの例を見てみましょう。

ステップ1 ~事前準備・透析中操作・記録について~

  • 透析への準備
  • 機器への接続操作
  • バイタルチェックなど透析中操作
  • 透析中、警報の対処法確認
  • 機械操作(透析装置全般)
  • 機器の清潔のやり方
  • 記録用紙記載方法

ステップ2 ~自己穿刺や血液回収・終了操作について~

  • 自己穿刺の指導・練習
  • 抜針などの回収操作
  • 医療廃棄物の取扱いと廃棄手順について

ステップ3 ~仮装在宅血液透析について~

  • 機械操作(個人用透析装置・RO装置)
  • 透析装置洗浄操作
  • 物品管理説明
  • 最終確認
  • フラッシング・緊急時回収方法など介助者への指導
  • トラブルシューティング

これらの流れは病院やクリニックによって若干異なる場合があります。

まずは準備・装置の扱い方から最後はトラブルが起こった時の対処法まで学びます。病院で専門スタッフにしてもらっていたものを患者と介助者でやっていかなければならないので、トレーニングも期間が必要になるのは仕方ありませんね。

日常での点検や廃棄処理など管理も必要

在宅透析を行う場合、廃棄物についても知っておく必要があります。原則としては、在宅医療の廃棄物は各自治体が家庭系の一般廃棄物として処理する必要があります(各自治体ことに異なるのが現状です)。医療廃棄物について住まいの自治体に確認を取っておくことを推奨します。

また、医療廃棄物は処理するためにお金がかかります。住んでいる地域によって若干の違いはありますが、1カ月1万円程度と考えておくと良いでしょう。

コストを抑えたいという人は、自宅で捨てずに病院に持参するという方法もあります。その場合、費用はかかりません。病院やクリニックによっては、スタッフが医療廃棄物の回収を行ってくれるケースもあります。捨てることができても細かいルールを設けていることが多いです。

廃棄物処理の具体例

  • 収集日に家庭の燃えるごみとして出す。
  • 自宅に廃棄物用の容器を準備し、まとめて管理施設へ持ち込む。

※家庭ごみとして出す場合は、二重包装や針な管理施設に出すなど周囲に迷惑かからないようにしましょう

まとめ

透析治療を受けている患者の原因疾患として最も多い糖尿病性腎症。透析療法を一度始めると一生続ける必要があります。自分がどういった日常生活を送りたいのか、また病状に対して最適な治療は何なのか、よく考えて透析療法の方法を選択しなければなりません。

在宅血液透析の魅力はQOL(生活の質)を上げ、快適な生活を送れることです。ですが、在宅血液透析は患者と医療従事者が協力し合ってこそ成り立つ治療法です。在宅透析を行うには、きちんとルールを守って透析を行う必要があります。

水分の摂取や食生活が医師の指示通りに行われていないと、体液のバランスがくずれ、心不全の合併症を招きやすくなります。健康の自己管理はベストな体調を保つために必要不可欠です。

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